活動記事
場 所:北海道開発技術センター 4F会議室及びオンライン(ZOOM)によるハイブリッド開催
1. 研究のねらい
講師の専門はデータマイニング、データベース、AIで、大量データから有用な規則を抽出する研究に従事していると述べられました。この研究の背景として、函館の交通事故の現状(冬道・高齢化・観光地・幹線道路といった地域特性)や、統計だけでは背景要因が見えにくく予防策につながりにくい点を指摘し、データ分析により傾向を定量化して予防に活かすねらいを説明されました。
2. 北海道警察との共同研究
これまで北海道警察とは単発の協力(サイバーセキュリティ関連の情報提供等)がありましたが、2024年度からは共同研究として交通事故発生予測システムの構築に取り組んでいるとのことでした。地元の情報系大学であること、データ分析・AIの知見、道警に卒業生がいることなどが背景にあります。
3. データ提供と分析方法
道警からは、まず3年分(1,273件)の事故データ(時刻、場所、事故類型、天候、季節、道路状況など)が提供され、のちに最新1年分とサポートカー関連の情報が追加されました。分析は、事故の重傷度(重傷/軽傷)に着目し、事故環境や時間帯・季節などを説明変数として、ランダムフォレストや線形SVM等の機械学習手法で特徴抽出を行ったものです。
4. 分析結果
事故が起きやすい環境の分析結果では、重傷度が高くなりやすい特徴として「横断その他」「背面通行中」「人対車他」、冬期では「スリップ」が抽出されました。一方、重傷度が低くなりやすい特徴として「追突その他」が示されました。考察として、背面通行は歩行者が車両に背を向けるため発見が遅れ、防御姿勢を取りづらいことが重傷化につながる可能性があるとのことでした。追突は低速域の発生が多く、歩行者追突が含まれないことが重傷化しにくい要因と考えられるとの説明でした。時間帯や季節の傾向については、重傷度が低くなる関係として「1月」「雪」「土曜日」が挙げられました。1月は住民が雪道に慣れ、慎重な運転が広がることで事故の重傷化が抑えられる可能性があるとの見解でした。
5. 得られた示唆
行政に対しては、危険な横断行動が集中する地点の特定や、季節・曜日の違いを踏まえた交通安全施策、通学路や高齢者対策への活用が示されました。企業・現場向けには、事故類型情報を用いた動線設計、雪道の安全運転指導、AIによる危険地点の事前提示など、具体的な応用の方向性が提案されました。
研究面では、冬道要因や他データとの統合、リアルタイムデータを組み込んだ“交通事故予報”の可能性、他機関連携による精度向上(氷雪状態・交通誘導・スタック情報との連携)など、発展の余地が示されました。
6. 研究成果と展望
共同研究に関するプレスリリースや学会発表を実施済みであり、地域への還元や教材化、社会実装に向けた検討も進めるとのことでした。まとめとして、事故はパターンで説明でき、AIは意思決定を支援するツールであること、冬道の安全性向上と地域とともに進める研究の重要性を強調されました。
7. 質疑応答
道路構造を加味した事故分析、観光客と地域住民の人流差異、今後の活用ニーズについての質問があり、活発な意見交換がなされました。


本講演では、深層学習を活用してカメラ画像から路面の雪氷状態やすべりやすさを推定する技術について紹介がありました。対象は積雪寒冷地域の道路で、冬期の交通安全と円滑な交通を確保するための支援技術として研究が進められているとのことです。
日本の国土の半分以上は積雪寒冷地域に属し、冬期には降雪や凍結による交通障害が頻発します。統計でも冬季は物損事故が増え、平均走行速度が大きく低下する傾向が示されています。除雪や凍結防止剤散布などの対策を適切に行うには、路面状態の正確な把握が重要ですが、現場ではその方法に課題があると指摘されました。
従来の手法には、パトロールによる目視確認と、摩擦計測車両や近赤外線センサーなどの専用機器を用いた計測があります。目視は簡便ですが経験に左右され、専用装置は高精度ながら高コストで扱いが難しく、広範囲への導入が困難です。このため、低コストで客観的に路面状態を把握できる新たな手法が求められてきました。
寒地土木研究所では、スマートフォンやドライブレコーダー、道路CCTVなどの既存カメラ映像をAIで解析し、路面性状や摩擦係数、積雪凹凸を推定する技術を開発しています。AIには畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いており、スマートフォンでも動作可能な軽量モデルを採用しています。学習データとして、すべり抵抗計測車両での実測値と路面画像を組み合わせたデータを多条件下で収集し、これまでに延べ6,000km分のデータを蓄積したとのことです。
札幌市内での検証では、摩擦係数の推定精度はおおむね良好で、実測値との差が許容範囲に収まる的中率は約8割でした。ただし、危険箇所を安全と誤判定する「見逃し」のリスクを踏まえると、さらなる精度向上が必要であり、この点を重視してモデル改良が進められているとの説明がありました。
想定される活用場面として、スマートフォンを車内に固定して走行しながら路面状態をリアルタイムに把握する仕組みや、道路CCTV画像をサーバで解析して広域監視に活用する方法が紹介されました。また、凍結防止剤散布支援システムと連携し、滑りやすい区間に絞った散布を行うなどの高度化も期待されます。さらに、路面状態の推定結果と気象予測データを組み合わせることで、ロードヒーティングなどの運転開始を予測的に制御する「賢い運用」への発展も検討されているとのことです。
これらの技術は、高価な専用装置に頼らず路面状態を把握できる点が大きな利点であり、冬期道路管理における人員・予算が限られる中で、効率的で持続可能な対策の実現に寄与する可能性があるとまとめられました。
質疑応答では、道路管理以外への活用、スマホ版とCCTV版の違い、AI推定精度80%の評価、予測データとの連携方法などに関する質問があり、今後の実用化や精度向上への期待が示されました。


「KB-eye for 交通制御」と題して、警備業における課題や芦別市での実証実験の内容、KB-eyeのシステム詳細について大八木様、折井様からご紹介いただきました。
はじめに、大八木様から、警備業界の現状と芦別市での実証実験についてご紹介いただきました。
警備業界では事故の危険性が常に存在し、令和4年には全国で20名が亡くなっています。また、建設技術職以上の採用難が続き、警備員の高齢化も深刻で、5人に1人が70歳以上という状況です。
こうした課題を背景に、芦別市の片側交互通行の電気通信工事においてKB-eyeの導入が決定されました。
KB-eyeは、規制区間の両端に大型LEDを設置し、区間内に安全確認用カメラを配置。AIが状況を判断し、自動で両端のLEDを制御して進行・停止を誘導するシステムです。
芦別市の現場は約700mの規制区間で、従来は4~6名の交通誘導員が必要でしたが、導入後はオペレーター2名で対応可能となりました。降雪や吹雪でもLEDの視認性に問題はなく、気温-14度の極寒下でもAI機器にトラブルはなく、安全な誘導が実現しました。
特に、両端に誘導員を配置しなくてよい点は、警備会社の経営者にとって安全性確保の大きなメリットであるということです。
続いて、KB-eye株式会社の折井様からシステム概要と導入事例の紹介がありました。
KB-eyeは「完全自動化」ではなく、コストパフォーマンスと安全性のバランスを重視し、人が得意な部分は人が担う「省人化」システムとして設計されています。
片側交互通行のハイブリッド警備では、基本的にAIに任せつつ、誘導無視や工事車両の出入りなどのイレギュラー対応のため、最低1名のオペレーターを配置し、リモコン操作で緊急対応を行います。
工事用信号機との差別化はAI搭載にあり、国土交通省の大臣官房事務連絡で交通誘導員の代替として認められ、警察庁交通局の保安施設設置基準にも「映像解析AI警備システム」が追加されました(現状では国内でKB-eyeのみ)。
2025年11月時点で36都道府県に導入実績があり、今後も改良を重ね、人とシステムの最適な役割分担を目指して運用を強化していく方針です。
質疑応答では、LEDへの着雪、交通誘導員代替時の積算方法、規制区間への誤進入などにに関する質問があり、活発な議論が交わされました。


「AIを活用した積雪によるスタック検知」と題して、SNS・画像解析・プローブデータ等を活用した防災・危機管理DXの取り組みについてご講演いただきました。
株式会社Specteeは「危機を可視化する」をミッションに掲げ、世界各地で発生するあらゆる危機を迅速に外部へ発信することで、対応の早期化を目指しています。そのために、SNS、ニュース、気象データ、交通データ、ライブカメラ、人工衛星など、世界中の多様な情報を24時間365日リアルタイムで収集しています。収集したデータはAIによって解析され、影響評価や予測に活用され、世界中の「危機」をリアルタイムに可視化しているとのことです。「危機」については当初は自然災害を対象としていましたが、それだけではなくサイバー攻撃や海外におけるテロなど、世の中で「リスク」と言われるものを24時間リアルタイムで分析を行い、情報提供を行っているとのことです。
今回はその中でも、道路上で発生するスタック(車両滞留)の回避を目的とした、交通インフラの状況をリアルタイムに推定するための技術的アプローチについてご紹介いただきました。
株式会社Specteeと一般財団法人日本気象協会は、道路カメラや車載カメラの映像と気象データを統合し、AIによって解析することで、積雪状況や路面状態、歩道の滑りやすさなどを即時に判定する仕組みの共同開発を進めているとのことです。
また、自動車メーカーが保有するプローブデータを活用して、大雪時のスタックをAI解析で検知するシステムの構築を進めているとのことです。
大雪のスタックについては、当初はSNS情報から即時にスタックを検知するサービスを提供していたそうですが、SNS情報に投稿された情報はスタックしてから投稿されたものや、被害がかなり大きくなってから投稿されたものが多く、スタック前の予兆についての投稿はほとんどないということが課題でした。そこで、自動車のプローブデータを活用し、SNS情報や気象データなど複数のデータを掛け合わせ、AIでスタックを予測検知できないかということで、検知モデルの構築を行い、スタックの早期検知・可視化への活用可能性を実証実験しているそうです。
道路だけではなく河川においては、AIによる内水氾濫や外水氾濫の被害推定のほか、河川水位のAI予測にも取り組まれているそうで、こちらはSNS情報や河川ライブカメラ、地形データ、降水量データなどを掛け合わせてAI解析を行い、浸水や冠水の発生地域の推定図を作成するもので、こちらはすでに実用化されているとのことです。
質疑応答では、SNSと自動車プローブデータからどのようにスタック予測検知を行っているのか、その具体的な手法や、氾濫推定や河川水位予測の精度向上の工夫点などについての質問があり、これらのテーマをめぐって、活発な質疑応答が展開されました。


