活動記事

2017年12月12日
平成29年度 第2回地域ITS研究会
日 時:平成29年12月12日(火) 14:00~17:00
場 所:NCO札幌(旧ビル名:NSSニューステージ札幌) 5F会議室

 

講演1
AIを活用したITSへのアプローチ
山下 倫央 様
(北海道大学 大学院情報科学研究科 情報理工学専攻 
複合情報工学講座 調和系工学研究室 准教授)

山下先生の研究室では、人工知能(ディープラーニング)を応用し、人々の幸せに貢献することを目標に研究活動を行っています。ご講演では、AIについて概説していただき、これまでに取り組んできた企業との共同研究事例などをご紹介いただきました。

今は第3次のAIブームであり、その背景として、ビックデータ、GPUによる高速計算、ディープラーニング(ニューラルネットワークの複層化)が挙げられました。これらにより、人間のようにカメラ画像などの実データを、高速に処理することが可能になりました。 また、今のAIは人間の知能の一部の代わりを行う機械であり、本物の知能をもつAIとは区別されるとのことです。

研究事例として、KDDIとの共同研究である「ゆずりあう自動運転の実現」についてご紹介頂きました。自動運転が不得意とされる合流や追い越しといった他車両との協調に対し、本物の知能のように複数の判断・行動をひとつのAIで対応するのではなく、様々な意思決定と行動を複数のAIで分離させ、モジュール化するというアプローチで、ラウンドアバウトなどの無信号交差点における譲り合いをラジコンカーで実現させたとのことです。

この他、VICSによる渋滞情報が渋滞を助長させる可能性があることを示し、これを改善するため各車が情報共有を行う「協調カーナビ」を提案した研究事例や、シミュレーションによるイベント時の交通総量抑制の効果検証などの研究事例を、わかりやすくご紹介いただきました。

質疑応答では、モラベックのパラドックスについて、「強いAI」と「弱いAI」の違いとは何か、「弱いAI」が学習していくと「強いAI」になるのか、これからAIを勉強していく上で有効なプログラミング言語は何か、といった質問の他、歩行者と自動車の譲り合いに関する研究の可能性、AIの普及により人間の能力が劣っていくのではないかといった議論など、活発な質疑応答が行われました。


講演の模様
話題提供1
北海道における自動走行に関する取組について
上野 修司 様
(北海道 経済部 産業振興局 産業振興課 ものづくり産業グループ 主幹)

北海道庁では、自動走行車の実用化に向けた研究開発に貢献できるよう、産学官の連携のもと、「北海道自動車安全技術検討会議」を設置し、取り組みを推進しています。 上野様からは、自動走行に関する「研究開発の促進」と、「社会実証事業の検討・推進」に対する北海道の取り組みについて話題提供をいただきました。

全国最多の28のテストコースが集積する北海道は、積雪寒冷地という気象特性のもとで自動走行の実証試験が可能であるという特徴(ポテンシャル)を有しています。このポテンシャルを活かし、研究開発拠点の集積による経済活性化と、未来の社会実装にいち早く対応し、ビジネス化や地域課題解決への貢献を目指しています。

具体の取り組みとして、テストコース事業者のニーズを踏まえ、自動走行関連の実証実験に関わる手続きの円滑化や、企業ニーズに対応した道路の情報提供、研究・技術シーズの紹介・マッチングなどを行うワンストップ窓口を平成28年6月に開設しました。また、平成29年度は公道試験の適地情報調査およびカタログ化を行っているとのことです。 質疑では、今後の自動運転を通じてどのような北海道を目指しているのかなど、建設的な意見交換が行われました。


講演の模様
話題提供2
i-Snowの取組について
~産官学民で目指す除雪現場の省力化~
小林 暁 様 (北海道開発局 建設部 道路維持課 維持第1係長)

道路除雪に携わるオペレータの減少と高齢化や、冬期通行止めの増加などの課題解決に向けた除雪現場の省力化の取り組み「i-Snow(除雪現場の省力化による生産性・安全性の向上に関する取組プラットフォーム)」について、小林様より話題提供をいただきました。

「i-Snow」は、除雪現場及び除雪技術に関する情報共有と除雪現場の改善への取り組みを産官学民で行っていく活動で、除雪現場の省力化により生産性・安全性を向上させるとともに、人口減少下でもヒトとモノの交流・滞留を活性化できる産業構造、経済活動を維持発展させていくことを目的としているとのことです。

平成30年度の実証実験に向けて今年度は、自車位置把握の取り組みとして、国道334号知床峠を対象としたMMSによる測量調査と3Dマップの作成、およびRFID計測精度の検証を行っています。この他、作業装置自動化に向けたロータリー除雪車の投雪軌跡調査、安全確認に関してはミリ波レーダ探知性能検証や視界不良時の映像鮮明化技術調査などを行っているとのことです。

質疑では、省力化の方向性(少ない人員で対応できるもの、あるいはスキルがない人のレベルアップを図るもの等)や、様々なメニューの中で重点的に取り組んでいる取り組みは何か等、活発な意見交換が行われました。 

北海道開発局 i-Snow


講演の模様
話題提供3
吹雪の視界情報」の取り組み
松沢 勝 様
(国立研究開発法人 土木研究所 寒地土木研究所 
寒地道路研究グループ 雪氷チーム 上席研究員)

寒地土木研究所雪氷チームが平成25年2月から取り組んでいる「吹雪の視界情報」について、松澤様から報告をいただきました。

24時間先までの吹雪時の視界予測を5段階で、北海道内221エリアに分けて提供する「吹雪の視界情報」の提供、登録ボランティア「北の道サポータ」により投稿された「吹雪の投稿情報」の提供、そして、地域毎に事前に設定した条件の視界不良予測情報をメールで提供する「メール配信サービス」の紹介がありました。

質疑では、視界不良時にどのような行動を取ると良いか提示することの提案や、道路の吹雪画像を自動的に取得・配信するシステムを考えると良いのでは無いかなど、建設的な意見交換が行われました。

※吹雪の視界情報
 ・パソコン
 ・スマートフォン
 ・携帯電話


講演の模様
話題提供4
つるつる路面転倒防止に向けた平成29年度冬季の取り組み
金村 直俊 様
(札幌総合情報センター(株)/ ウインターライフ推進協議会つるつる路面情報WG)

「札幌市データ活用プラットフォーム構築事業」の一環で実施される"つるつる路面転倒防止に関する取り組み"の概要について、金村様より話題提供をいただきました。

札幌市内で多発する凍結路面による転倒事故対策には、滑り止め材(砂)の散布が有効であることから、滑り止め材利用に関する認知度向上や散布経験者の増加を図ることを目的に開設したwebサイトについてご紹介頂きました。

このWEBサイトでは、つるつる路面情報の登録機能の他、転倒事故の多い場所、行き先・年齢・性別に応じた注意喚起情報、そして砂箱位置情報の提供が行われています。これらの情報収集・提供は、インストール等の手間がかからないスマートフォンのブラウザを活用しており、利用者登録等を行わなくても利用できるなど、利用にあたっての垣根を低くしているのが特徴とのことです。

質疑応答では、得られた路面情報の道路管理者へのフィードバックの有無や、自動車のスリップ事故対策としてのデータ活用の有効性など、活発な質疑応答が行われました。 

つるつる路面で転ばんためのWebサイト「つるばん」


講演の模様