活動記事

2007年7月18日
平成19年度 第1回地域ITS研究会
日 時:平成19年7月18日(木)
場 所:(財)北海道道路管理技術センター

 

講演1
北海道運輸局における観光対策の取り組み
山崎 貴志 様
(北海道運輸局 交通企画課 企画第一係長)

これまでの北海道観光について振り返るとともにこれからの北海道観光の北海道運輸局としての取り組みの方向についてご説明いただいた後で,具体的なプロジェクトの例として「摩周・屈斜路環境にやさしい観光交通実験」の概要についてご紹介いただきました。

(1)これまでの北海道観光とこれからの北海道観光

これまで北海道の観光は、広大な土地に点在するスポットを短期間に周遊する周遊型観光が主で地域への波及効果が少なく、リピート率は高くなかった。 これからは、滞在型で個人旅行化に対応し潜在的需要を掘り起こすことが重要で、そのためには域内交通(公共交通)の維持充実が不可欠である。 運輸局では、地域の交通問題を関係者のみではなく経済界、NPOを含め幅広く関係者を集め公共交通活性化プログラムを立ち上げ、個々の問題についてはプロジェクト化によって問題の解決を図ることとした。

(2)摩周・屈斜路環境にやさしい観光交通実験

活性化プロジェクトのひとつとして摩周・屈斜路観光交通実験が紹介された。 摩周湖は近年、透明度が低下し、周辺の樹木の立ち枯れが目立つようになってきた。特に夏季は乗用車による摩周湖展望台へのアクセスが多く、大気汚染も深刻な状況となっている。一方、観光事業の面では、日帰り客が6割を占め、滞在型観光地への転換が地域の活性化にとって重要という弟子屈町の調査結果が出されている。 プロジェクトでは摩周湖への一般車両の乗り入れ規制を実施することで、豊かな自然を守り、滞在型観光への転換図るための観光交通実験を行った。 実験は6月11日~17日に行われ、クーポンの発行や各種イベントの開催等を実施した結果、速報では、代替バスを利用した観光客の内アンケートに回答した99%が車の乗り入れ規制を容認する成果が得られた。今後、本格運用に向け情報提供の充実やコスト削減など課題はあるものの、環境負荷の低減と観光による地域活性化のために努力していきたい。

【質疑応答】

■アンケートの場所および対象者は?
→ 代替バスのチケット購入者のみ。ほとんどが実験に納得して協力いただいた方なので、結果は割り引く必要があるかもしれない。   意外と道外客がフェリーを利用し釧路経由で来ている。今回フェリー会社には案内はしておらず、次回に生かしたい。

■乗り入れ規制が継続可能な代替バスの料金は?
→ 路線バスは片道540円、今回の実験では往復で500円なのでかなり安く設定した。バス運用のみだとペイするが、スタッフ等の維持経費をまかなうとなると足りない(1000円くらいか)。

■滞在者は増加したか
→ 分析はこれからだが、泊る場所を決めていない観光客が意外と多いことがわかった。案内所を設置したが、毎日宿泊場所に関する問い合わせがあった。スタッフとのふれ合いが気に入り宿泊した例もあった。川湯側では10人以上宿泊したと報告がある。

■地元の一次産品業者との連携も必要では
→ 実験期間中の日曜日に50kgのジャガイモを配った際、近くの喫茶店が混みあったことなど重要性はわかった。

■交通規制に困難は無かったか
→ 警察との交渉は、規制する明確な理由が無いため、半年~1年かかった。上高地、乗鞍の例で説明し理解していただいた。

■環境負荷への効果は
→ 大気調査は実施した。解析はこれから。湖水の透明度低下は複合的な要因と思われる。外輪山の緑が剥げてきており斜面崩落の影響もあるかもしれない。

話題提供1
道の駅からの情報発信と地域連携~道の駅情報提供端末のリニューアル、及び地域連携と情報発信について
畑山 朗 様
(北海道開発局道路計画課調整係長)
平山 真大 様
(北海道開発局開発調整課開発専門官)

道の駅からの情報発信と地域連携の各種取り組みについてお話頂きました。

(1)道の駅からの情報発信と地域連携
1)道の駅の利用実態調査 ・利用目的は、休息機能(トイレ、休息・飲食、売店、自販機)が主で滞在時間も30分が多い。 ・道路・観光情報入手目的は少ない。 ・情報入手手段はポスターや掲示板、道の駅情報提供端末が多く、ニーズは通行規制、渋滞・所要時間、気象や路面状態、途中の休息施設が高い。 ・具体的なコンテンツとしては、道路画像、道路情報、天気情報の要望が高かった。
2)新しい道の駅情報提供端末の特徴 ・トップページを見ただけで、提供されている情報がすぐわかるレイアウト、目的地までのルート案内、峠の情報、道路画像、外国語対応が特徴である。
3)今後について ・詳細メニューや地図の英語・ローマ字表記、評価検証、地域からのお知らせの充実を予定している。

(2)広域的な連携を活用した地域づくり検討結果の概要
1)調査の背景・目的 ・北海道の観光が団体旅行から体験型の個人・小グループ旅行にシフトしつつあり、レンタカー等を利用した広域周遊観光が増加している。 ・「道の駅」を地域の拠点とした広域的な観光交流による地域づくりおよび支援基盤整備を推進するため、現状の把握を行い、「道の駅」における情報発信に関する課題を抽出し、方策の提案を行う。
2)「道の駅」の情報発信・地域連携に関する現状の把握 ・道の駅で優れた取り組みを、広域連携、地域連携、観光情報提供をテーマとし抽出(グッドプラクティス)。
3)地域との連携のための「道の駅」における情報発信に関する課題の抽出 ・ドライブ観光への対応が遅れている。経営的な成果が第一で広域連携、地域連携など公共目的がおろそかになる可能性がある。動的・リアルタイムな情報発信が少ないなどの課題が明らかになった。
4)「道の駅」との連携による地域づくり推進の方策及び基盤整備の提案 ・広域連携のためのプラットフォーム組織作り、情報発信のスタンダード化、コミュニティーの活性化、ユーザーサイドから「道の駅」の利便性を図るユーザークラブの組織化などの提案を行う。

【質疑】
■レンタカー、空港への端末の展開は?
→ 可能性はある。その他、ホテル、JR、観光地についても議論はある。
■リニューアルは北海道だけか
→ 全国標準版が使いにくいため開発局がリニューアルを行った。恐らく北海道だけの対応。
■メンテナンスは?
→ ハードウェアのメンテナンスは開発局で対応。  道の駅情報の内容充実については検討中。
■アンケート回答者の7割が観光目的だが、道の駅情報のニーズには観光情報が無いが?
→ アンケートは別々に取ったためリンクしていない。
■道の駅の差別化と均質化の線引きは
→ 最低限の情報発信についてレベルを合わせる。広域周遊を考慮し、入り口の駅と観光地に近い駅それぞれに役割を持たせ、地域を回ってもらう工夫をしたい。
■外国は特殊な交通手段とガイドやエリアを制限するなどの例があるが
→ 道の駅を乗り換え拠点とし、観光地にはエコロジー的手段で運び、待つ間に飲食や購買、宿泊をするようなシナリオ作り、プロデュースが必要。
■グッドプラクティスについて人気度による補填もあってよいのでは
→ 利用客の把握の仕方が十分できていない。道の駅の情報発信は地域づくりにつなげる方策。

【全体意見交換】
■摩周湖の実験はあえてピーク時をはずした。弟子屈の役場は全90名のうち40名を投入する人海戦術だった。道内客は周知するほど敬遠するかもしれないが、ピーク時の実験もやってみたい。閑散期との比較も実施したい。
■大雪山では特に規制をしていないため、ピーク時は混雑が激しく十分に景観を見ることができない。排ガスに対する苦情も出ている。その観点での調査も必要ではないか。
■摩周湖でパークアンドライド方式にできないか。車で行くより面白いという仕組みが考えられないか。イベント、ガイド、ビュッフェなど盛りだくさんのツアーコースなど付加価値を付けたやり方も検討できる。 → ボランティアガイドはできればやりたい。人と人とのつながりが大事。おもてなしの気持ちが伝わるやり方。
■A級の観光資源を生かすプロデュースを望む。