活動記事

2005年12月26日
平成17年度 第3回地域ITS研究会
日 時:平成17年12月26日(月)
場 所:(財)北海道道路管理技術センター 会議室

 

話題提供1
稚内で開催された『北海道ITS推進フォーラム講演会』について
伊藤 様
(社団法人 北海道開発技術センター 研究員)

発表の様子

当日の開催風景

稚内で開催された「北海道ITS推進フォーラム講演会」での講演やパネルディスカッションについて、次のような内容でお話しいただきました。

A) 清水先生の基調講演について

(1) 交通システム計画におけるITSの意義

  • ITSを積極的に活用してニーズに即した交通サービスの持続的改善を図り、運用を効果的に行うことが大切。
  • 交通システム計画で活用するITSは広義に捉え、「人間の知恵」や「IT技術」として考えた方が良い。

(2) 土木学会におけるITS研究の現状

  • 道路管理者、交通管理者とともに、「実践的ITS研究特別委員会」を設置。
  • 北海道(宗谷)、秋田、広島の3つの地区がそれぞれ抱える現実の問題を短期的に解決することを研究課題として、研究を実施。
  • 現在はシステム整備が先行している傾向にあり、今後はニーズへの対応を優先にしていくことが望ましい。

(3) ITSニーズの新展開;地域からの発信

  • ITSは、多様化する道路事業の業績に対する評価などの役割などを担う。
  • 地域でよりITSを推進させるために、地域民間組織との協働や行政間の協働などが必要となる。

B) パネルディスカッションについて

(1) 宗谷地域の夏の季節の観光戦略におけるITS

  • 観光者を中心に、道路状況を知りたいという要望が増えており、ITSを活用した対応が検討されている一方で、宗谷地域はブロードバンドの普及率が低く、利用者は提供される情報を十分に利用できていない。
  • 道路の光ファイバー等を民間でも利用できる制度等を活用しながら情報提供を進めていけると良い。

(2) 吹雪などの冬道の問題に対するITS

  • 携帯電話で利用できる、道路、気象情報提供の仕組みはあるが、局所的・一時的な気象変化の情報提供は困難。実際に走っている位置の情報をすくい上げて、それを反映させる仕組みを構築していく必要がある。
  • 今後は、(1)や(2)などのITSでどのように道や暮らしが変わっていくかという議論が必要と考えられる。 (意見交換) 以下の意見交換がありました。
  • 実践的ITS研究特別委員会には3つの部会があり、今回の講演会では、実践部会についての説明を行った。
  • 萌芽部会、重点部会では、若手委員が実践部会での取組み内容よりもっと手前(実践に至る前)の課題やテーマに取組んでいる。
  • 都心部では、ETCが運用されているなどITSが浸透しつつあるが、地方部では、ETC、ITSなどの言葉でさえ浸透していない。
話題提供2
第12回ITS世界会議に参加して
有村 様
(独立行政法人 北海道開発土木研究所 道路部 防災雪氷研究室 特別研究員)

第12回ITS世界会議の報告として、「ITS世界会議の概要」「511サービス」「札幌市のモビリティ」についてお話しいただきました。

A)ITS世界会議の概要

  • ITS世界会議は、世界3地域(アジア・ヨーロッパ・アメリカ)を代表するITS団体(政府、学界、民間企業等)が共同で開催する国際会議で、「技術開発のみならず、交通政策や市場動向など、幅広い観点からの情報交換によるITS普及と交通問題の解決、ビジネス創出」を目的としている。
  • アジア、アメリカ、ヨーロッパの順に開催地が選出され、第12回目となる今回の世界会議はアメリカのサンフランシスコで開催された。
  • 会議における話題には「511 travel information」(511サービス)などがあった。

B) 511サービス

  • フロリダ州では、511にコールすると、3分間隔で更新される道路・交通情報(高速道路の渋滞、工事、通行止め、気象、各区間の通過時間の情報など)の提供を受けることができる。
  • サンフランシスコでは、携帯電話からでも通話料無料の電話自動応答サービス、Webでの情報提供、カーナビでの情報提供を行っている。
  • 提供している情報は、リアルタイムな渋滞情報、目的地までの到着時間、公共交通機関との所要時間の比較、ライドシェア(相乗り)の相手募集などがある。

C)札幌市のモビリティ

  • 札幌市都市の交通ビジョンは、歩行者中心で、都市の快適性を重視している。
  • 札幌市で車輌の都市流入を規制した場合、迂回交通によりCO2排出量増加の可能性があり、環境評価が必要となる。
  • 札幌について、北海道の人口の半分が居住する都市の交通デザインとして、どのように考えていくべきか、その中で行政が果たす役割はどのようなものなのか、検討していく必要があると考えられる。
  • 今後のITSは、シーズ(技術・アイディア)とニーズ(ITSの必要性)、双方の視点が必要となり、技術とロジック、全体の展望を見据えて相互に連結していくことを考える必要がある。

(意見交換)
以下の意見交換がありました。

  • 511サービスの電話の受け手は人ではなく、機械が行っているが、満足度は高い。(約9割が満足)
  • 511サービスはアメリカ内で州ごとに行われておりサンフランシスコが最も特徴のある事例である。 ・国の制度ではなく、国からの補助で行っているものと考えられる。
  • 511サービスは日本の9910の逆のサービスとなるが、今後は日本でも511サービスなどに取り組んでいく必要がある。
  • 今後は、高齢者向けのITSとして、高齢者は標識を見ても見間違う、疲れやすいなど高齢者の特徴に対応した検討も必要となる。
  • ニーズを常に意識しなければ、シーズが中心となる危険性がある。

以上